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リゲティ《ル・グラン・マカーブル》日本初演を観る

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    ついに日本初演です。

    リゲティのオペラ《ル・グラン・マカーブル》
    今日2月8日(日)二日目の公演を観てきました。

    私は1998年にパリのシャトレ劇場で、ピーター・セラーズの演出による上演を観ましたが、今回の藤田康城氏の演出は、それよりもはるかによかったと思います。

    セラーズの演出は、1997年のザルツブルク音楽祭で上演され、その翌年パリで上演されたものです。ただリゲティ自身は、セラーズの演出を全く評価していませんでした。
    これは、私が98年にパリでリゲティと会った際に、リゲティから直接聞いたことです。
    その時に彼は、セラーズの核戦争で世界が滅ぶという設定の演出に、「セラーズは私の作品がわかっていない・・・でも世の中では、演出家のほうが偉いのだ」と不満を述べていました。
    リゲティ/オペラ「グラン・マカブル」
    リゲティ/オペラ「グラン・マカブル」
    フィルハーモニア管弦楽団,リゲティ,サロネン(エサ=ペッカ)

    参考資料

    ↑1997年ザルツブルク音楽祭でのセラーズ演出の舞台


    今回の藤田氏の演出は、苦労の跡は多々見られました(特に後半)が、場面ごとに要求される細かい指示を表現していて、秀逸なものだと思いました。また、長木誠司氏による訳(字幕)も大変に良かったです。

    歌手、合唱、オーケストラ、そして指揮者も大健闘でよい舞台になっていました。
    こうした舞台が、東京室内歌劇場という私設団体によって実現したことは、特筆に値します。オペラとして、至難な作品をここまで仕上げた実力は、世界に誇れるものです。

    できることならば、あと2回は上演してほしかったです。それが実際には非常に難しいというのは分かっていますが、聴衆のためのみならず、制作にかかわった全ての人(もちろん歌手の皆さんを含め)、ひいては日本の音楽界のためにも、こうした公演がイヴェントとしてではなく、文化的な財産として受け継がれていくような体制が必要なのだ、と感じます。2日あったとはいえ、ダブルキャストなので、ほとんどの出演者は1回の公演のためだけに、この超難しいオペラに取り組んだわけです。暗譜し演技をマスターする!大変な労力なのです。もし、これが少なくとも各キャストであと1回ずつ、計2回あったら、どれほど出演者や聴衆にどれほどの恩恵をもたらすことか(もちろん作品の好き嫌いは別としてです)。

    このことは、私自身がリゲティの作品(ピアノ協奏曲、室内協奏曲、アヴァンチュール、ヌーヴェル・アヴァンチュール)を指揮しているので、非常に痛感しています。とにかくリゲティの作品は、譜読みに膨大な時間を必要とします。今日のプレトークで長木氏が「リゲティの譜面は複雑で緻密に書かれているのに、実際に音にしてみると、あまりそう聞こえない」と述べていましたが、まさにその通りです。だから、作品を繰り返し演奏できるなら、演奏家は作品を、古典と同じようにマスターでき、より深め、音楽家としてより成熟することができる。そして、それはひいては日本の文化的な財産の一部となる、私はそう考えています。

    今回の「ル・グラン・マカーブル」公演の成功が、近い将来にこの作品が再上演されることにつながるよう、心から願ってやみません。

    la fontaine * オペラ * 20:55 * comments(0) * trackbacks(0)

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