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チェチーリア・バルトリの「マリア」 

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    マリア(限定盤)(DVD付)
    バルトリ(チェチーリア)

    メゾ・ソプラノのチェチリア・バルトリの新しいCDです。
    リリースされたのは昨年でしたが、忙しくて買ったまましばらく
    まったく開封せずにいました。
    (昨年末にはチューリッヒで、実際にバルトリの舞台を観ることが
    できましたが、本当にすばらしの一言です)。

    このアルバムでは、もちろんバルトリの尽くせぬ魅力を聴くこと
    ができます。しかしそれだけではありません。
    アルバムにはテーマがあり、そのアプローチが大変にユニークなのです。
    タイトルの「マリア」は、19世紀初めに活躍した伝説の歌手マリア・マリブラン
    にちなんでいます。
    マリブランはスペイン出身のメゾ・ソプラノ歌手で、28歳という
    若さで夭逝してしまいました。単にオペラ歌手という存在にとどまらず、
    当時の社会のなかで常に話題になる現代で言えばスターのような
    華々しい存在だったのです。

    実はこのアルバムには、CDだけのものと、特典DVDの付いた限定盤
    があり、私はその限定盤のほうを買いました。CD本体もさることながら、
    特典DVDには、このアルバムの企画意図、バルトリのインタビュー、
    マリブランの足跡や録音風景などが記録されていて、個人的には
    必見の価値があると思います。
    彼女が歴史的なアプローチや裏づけや大切にしていることもよく
    わかります。CDのオリジナルブックレットは、英独仏三ヶ国語に
    よる詳しい解説になっています(それを要約した添付の日本語解説
    は物足りない! とくにオリジナルのブックレットでは、マリブランの
    同時人の証言をはさみながらが解説が述べられていますが、日本語
    解説は紙面の関係からか、その証言をすべてカット!これでは
    マリブランが同時代に与えたインパクトは見えてこないのでは、
    と思います)。

    今日私たちが、ソプラノのレパートリーと思っているものでも、
    実際はマリブランが歌ったことによって成功したものがあること。
    メゾ・ソプラノが歌うことによってその役割の性格がより明確に
    なることをバルトリは語っています。だから、このアルバムに
    「ノルマ」「清教徒」や「夢遊病の娘」からのアリアが含まれて
    いるからといって、決して間違ったことではないのです。なぜなら
    このすべてがマリブランの歌によって真価を認められたのですから。
    そしてバルトリは、マリブランの声がどのようなものであったか
    を実際に知るて手がかり(録音)がない以上、それは楽譜から
    読み取るしかないと考えて、オリジナルの楽譜や、マリブランの
    ために書かれた作品や版を研究しています。さらに伴奏のオーケストラ
    が古楽オーケストラ(チューリッヒ歌劇場ラ・チンティラ)という
    ことも興味深いです(ちなみにバルトリの最近のアルバムはすべて
    古楽オーケストラによる伴奏です)。

    ちなみにバルトリは今年4月、バーデン・バーデンで「夢遊病の娘」全曲
    を歌います(演奏会形式)。近い将来、彼女が「ノルマ」や「清教徒」を
    全曲歌う日が(ほぼ)間違いなく来るだろうと、私は予想しています。
    (このアルバムにもアリアが含まれています)。これは近年の彼女
    のアルバムが「ベル・カント発掘の歴史」をたどっていることからも
    わかります。

    そしてバルトリはここに「もう一人のマリア」、マリア・カラスを
    意識していることはまず間違いないでしょう。カラスもまたそれまで
    顧みられなかったオペラに新しい光を当てました。
    今年42歳。歌手として円熟と絶頂の時期を迎えつつあるバルトリの
    活躍に大注目です。

    ちなみに5月にバルトリが出演するチューリッヒ歌劇場でのオペラは、
    マリブランによって初演されたアレヴィの「クラーリ」です。

    la fontaine * CD/DVDレビュー * 01:40 * comments(0) * trackbacks(0)

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