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とっておきの音空間「新内ホール」@新得町

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    十数年前から北海道新得(しんとく)町にある廃校を再利用した
    施設を時々利用している。新内(にいない)ホールがそれだ。


    新内ホール(旧新内小学校)外観

    かつてはこの地区に集落があったが、ダムの建設にともない水没。
    今は居住区はない。一番近い人家(農家)まで約1.5km、JR新得駅
    までは8.7km離れている。この施設は知人の作曲家で札幌在住の
    南聡氏に紹介されて使うようになった。
    以前は毎年のように夏の1週間〜10日ほどをここで過ごしたが、
    ここ数年疎遠になっていた。
    先日3日間ではあったが久しぶりに訪れ、自分を磨いてきた。
    大きな都市に住み、仙台や新潟を新幹線で移動していると、知らず
    知らずのうちに耳が騒音になれてしまっている。それに忙しさに
    音楽とじっくりと向かい合う時間もおろそかになりがちだ。
    そうしたなか、ここには音楽に徹底的に集中するため、そして
    自分の耳を研ぎ澄ませるためにやってくる。とくに暑い夏の東京から
    逃れるにはうってつけだ。
    たしかに、別荘地や山荘に行けば、似たような自然環境はあるかも
    知れない。しかしここには他にはあまりない特別な「音空間」がある。


    新内ホール内部 
    毎年5月〜10月の間、コンサートや映画の上映会などが開かれている。

    校舎の教室二つ分を使いホールに改修された。椅子を並べれば
    50〜60席ほどのコンサートホールになる。天井が吹き抜けになって
    いるため、ほどよい残響がある。演奏に限らず実際のホールや、
    ある程度の広さを持つ空間で日ごろから練習することは、じつは
    非常に大切なことなのだ。それは音楽が「空間に解き放たれる」
    芸術だからだ。

    ここに来るといつも最初の1〜2時間は、耳がまだ静寂と空間に
    慣れていない。しかし時間が経つと聴こえ方が変わってくる。
    そしていままで意識していなかった音の変化や表情に気づかされる
    ようになる。だから私はここでかならずピアノを弾くようにしいて
    いる。空間に響く音を聞くためだ。

    そして私はここで三日間、以下の音楽と向き合った。

    第1日目
    ♪ピアノ作品
    バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 1・2・5・6番
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ作品31−1、31−2「テンペスト」

    ♪チェロ作品
    バッハ:無伴奏チェロ組曲から メヌエット 
    サン=サーンス:白鳥
    ゴルターマン:チェロ協奏曲第5番第1楽章

    ♪オーケストラ作品(スコア・リーディング)
    モーツァルト:交響曲第26番 K.184

    第2日目
    ♪ピアノ作品
    バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 15番
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ作品31−3
            ピアノ・ソナタ作品79
    ♪チェロ作品
    前日に同じ

    ♪オーケストラ作品
    ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」よりパストラール
    モーツァルト:交響曲39番

    第2日目 深夜
    ♪ピアノ作品
    バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 9、11〜14、16・17番

    第3日目
    ♪ピアノ作品
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ作品31−3 メヌエット
            ピアノ・ソナタ作品54

    ♪チェロ作品
    バッハ:無伴奏チェロ組曲から メヌエット

    ♪オーケストラ作品
    モーツァルト:オーボエ協奏曲
    メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲

    バッハの「平均律」とベートーヴェンの「ソナタ」は、以前に弾い
    たことがある曲だが、久しぶりに楽譜を見たので間違えたり、指定
    のテンポで弾けない箇所もある。しかしとにかく通して「演奏」した。
    また曲(楽章)によっては、いくつか異なるテンポ設定をして
    演奏してみる。そのことで音楽の違いや、ふさわしいテンポを考える
    ことができる。
    オーケストラの作品もたんに黙読するのではなく、ピアノで実際に
    響きを確かめながら(スコアリーディング)研究をしていく。

    二日目の深夜、入浴後に「風呂上りのピアノ演奏」をした。緊張し
    ていた筋肉がほぐれて、思いのほか弾き心地がよく気がつくと
    時計は午前1時を過ぎていた。こんな夜中にホールでピアノを思う
    存分弾くことが出来るのは、ここでしか味わえない贅沢だろう。


    新内小学校の由来


    ある朝・・・
    すぐそばで鹿が木の葉をついばんでいた。野生の鹿は警戒心が強い
    が、ホールのガラス窓越しにそっと撮った。わずか数メートルしか
    離れていない。

    仕事の合間には近くのサホロ湖まで自転車で出かける。

    サホロ湖(サホロダム)


    山の斜面からサホロ湖を望む
    天気の良い日は大自然の絶景が楽しめる。

    このホールの立地条件について、不便と考えるか、「桃源郷」と
    考えるかは意見が分かれるかもしれない。しかし、レトロな校舎と
    大自然、それになによりも響きのすばらしいホールが、とっておき
    の場所であることに異論はないだろう。
    もし欠点があるとすれば、合宿で使うには隣接した宿泊設備がない
    こと、11月から3月の冬季は寒冷地のため利用が難しいことだろう。

    新得町ホームページURL
    問い合わせ:
    新得町社会教育課




    la fontaine * エッセイ * 18:02 * comments(0) * trackbacks(0)

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