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アーノンクール指揮 『メサイア』

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    11月21日 19時サントリーホール
    ヘンデル『メサイア』
    ニコラウス・アーノンクール指揮
    ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

    ソプラノ:ユリア・クライター
    アルト:ベルナルダ・フィンク
    テノール:ヴェルナー・ギューラ
    バス:ルーベン・ドローレ
    合唱:アーノルト・シェーンベルク合唱団


    大変に充実したコンサートが聴けた。アーノンクールはこうした規模の
    大きな作品でその実力を発揮する。歌詞(の内容)と音楽の一致を
    彼ほど徹底的に追求する指揮者はいないだろう。
    ルーティーン・ワークになりたくないというアーノンクールは
    来日前に何度かヨーロッパで本番を重ねているにもかかわらず、
    『メサイア』を京都で6時間も練習したそうである。
    それだけのこだわり(ほとんど執念)と音楽の完成度を目指す
    彼のやり方はやはり凄いと言わねばならない。

    <ヴィブラートの誤解>
    演奏会で実演を聴いた古楽ファンはオーケストラが完全なノン・
    ヴィブラートでないことに驚いたのではないだろうか。
    古楽=アーノンクール=ノン・ヴィブラートの代名詞のように
    言われているが、彼は一度も「ノン・ヴィブラートでなければ
    ならない」と発言したことはない。むしろ「すべてノン・ヴィブラートも
    すべてヴィブラートも間違っている、ヴィブラートはその音の美的
    な質に関わっている」と主張している。
    たとえば対位法的な部分や、レチタティーヴォではヴィブラートを
    控え、旋律を歌わせるところでは短いヴィブラートをかける。
    あくまでも音楽の内容と質によるというのが彼の主張だ。
    『メサイア』の演奏もそれを反映していたと思う。

    <ハレルヤ・コーラス>
    『メサイア』のスコアにはヘンデルにより、オーケストラのソロ(senza rip.)と
    トゥッティ(con rip.)が細かく指示されている。
    ソロのところではオーケストラの人数が減らされ、トゥッティで
    全奏になる。当然それに強弱が関係するが、それをアーノンクールは
    実に丹念に表現していた。
    例えば、有名な「ハレルヤ・コーラス」。
    慣例的に強奏で始める演奏が多いがアーノンクールはここを弱奏で
    始める。なぜなら、曲の初めにsenza rip.と書かれているからだ
    (強弱が書かれている曲もあるが「ハレルヤ」にはない)。
    合唱も歌い出しは小さい。それが曲が進むに従い強さとテンポを
    増し行く。「ハレルヤ」が変化に富んだ曲としてユニークに演奏された。
    <コンツェントゥス・ムジクス>
    設立されてから53年。常設のオーケストラではないがアーノンクールの
    音楽的な意図を徹底して表現できるオーケストラだ。
    『メサイア』では弦楽が6,6,4,3,2 に管楽器、ティンパニ、
    チェンバロ・オルガンの編成。
    私はP席で聴いていたが、音量が小さいということはまったくなかった。
    細かいニュアンスまで表現できるすばらしいアンサンブルだ。
    記者会見で設立当時からのメンバーであるファゴット奏者の
    トゥルコヴィッチが、アンサンブルのメンバーを選定するのに
    テクニックのみならず他の楽員と協調できるかということが
    重要な要素になると述べていたが、楽団員同志の意思の疎通の
    良さが聴いていても感じられるようだった。

    <ソリスト>
    今回来日したソリストの中でアルとのフィンクを除くと若い
    ソリストが来日した。ヨーロッパでの演奏ではベテランが
    歌っている(例えばソプラノのシェーファー)。スケジュールや
    ギャラの問題もあるだろうが、せっかく26年ぶりの来日なのだから
    他のキャストも考えられなかったかと思う。
    もっとも6日間で『メサイア』とモーツァルトの『レクイエム』を
    2公演ずつ歌わなければならないから大変だとは思うが・・・。

    <合唱>
    すばらしかった。なにしろ力まず、無理なく自然な発声が聴いていて
    とても心地よい。アーノルト・シェーンベルク合唱団は長年
    アーノンクールと共演しているから、彼の意図を理解し表現していた。

    <アーノンクール>
    今回の来日。それはまさに奇跡だろう。日本でこれだけまとまって
    アーノンクールが聴けたのはほんとうに良かった。
    しかしこれでアーノンクール好きになった人も嫌いになった人も
    増えたと思う。人間の趣味は千差万別で、それはそれでいいのだ。
    ささやかな古楽器のアンサンブルを立ちあげたチェロ奏者が50年後に
    ヨーロッパの音楽のあり方、聴き方そのものを変えるほどの存在に
    なると誰が予想しただろう。指揮の専門教育を受けたわけでも、
    華麗な指揮姿でもない。ただ彼の中にある音楽の本質を追求して
    やまない稀有の情熱と真理への飽くなきチャレンジ精神。そして
    なによりも芸術家としての優れた感性。それこそが時代を動かした
    原動力だろう。
    そうしたことを実感させられた演奏会だった。


    アーノンクールの著書
    音楽は対話である
    那須田務・本多優之共訳
    アカデミア・ミュージックURL
    la fontaine * アーノンクール * 01:03 * comments(4) * -

    コメント

    >恐らく何百回と耳にしている曲なのに、まったく別物でした。鳥肌が立つのを超えて、身動きができないくらい世界に引き込まれていきました。

    それこそまさにアーノンクールが目指していることです。まるで初演のように今出来たばかりのように演奏すること。本当によかったですね!
    Comment by fontaine @ 2006/11/24 12:01 PM
    オール・バッハ・プログラム、聴いてきました!何よりも「G線上のアリア」にノックアウトされました!あまりに良く知っている曲なのに、恐らく何百回と耳にしている曲なのに、まったく別物でした。鳥肌が立つのを超えて、身動きができないくらい世界に引き込まれていきました。素晴らしかったです!!

    残念だったのは、キタラ大ホールに空席が目立ったこと。こんなに感動的な演奏に触れる絶好のチャンスだったのに・・・。

    今日はほとんど雪が降りませんでした。昨夜の雪が中島公園には残っていましたが。札幌は寒い季節を迎えています。
    Comment by hiromi @ 2006/11/24 1:44 AM
    そうですね、楽しみですね。
    明日の札幌は雪ですか?
    今日はぜひぐっすり眠ってくださいね。
    私は明日から新潟です。
    Comment by fontaine @ 2006/11/23 12:23 AM
    いよいよ明日はアーノンクール in 札幌です!楽しみで、今夜は眠れないかも・・・。
    Comment by hiromi @ 2006/11/22 11:19 PM
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