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武満徹の音楽

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    今年は武満徹没後10年である。もし誕生日を迎えていればまだ75歳だ。
    彼はどのような曲を書き、また世界に何を問うていたであろうか?

    最近、武満の作品をかなり数多く聴いている。
    これほどまとめて聴くのははじめてだ。そのことによって今まで気付かなかった
    ことに注意が向けられるようになってきた。
    西洋楽器を用い、オーケストラという西洋の最も高度な音楽形態を
    得意とした武満だが、後期の音楽には一種独特の「和の静寂」が漂って
    いるように感じられる。
    そこで初めて、彼の「音」が極めて日本的だという印象を持った。
    私はこれまで、あまりに彼の音楽を語法に囚われて聴いてこなかったか?

    例えば「夢窓」(1985年)にしても、「精霊の庭」(1994年)にしても
    そこから聞えてくる音楽は決して西洋の音楽ではない。
    (確かにドビュッシーやマーラーやベルクの語法は使われているが・・・)

    しかし、逆説的ではあるが、武満の日本的な「音」に気付くきっかけは
    もっともそれから離れている音楽、「系図」―若い人たちのための音楽詩
    を聴いてからだ。
    武満徹:エア,弦楽のためのレクイエム
    武満徹:エア,弦楽のためのレクイエム
    ニコレ(オーレル), 武満徹, 遠野凪子, サイトウ・キネン・オーケストラ, 御喜美江, 小澤征爾, 横山勝也, 鶴田錦史
    ここにはそれまでの武満の音の世界とは異なる、きわめて西洋的な、
    もっと言ってしまえば欧米の作曲家でも書きそうな「音」が並んでいる。
    ほぼ同じ時期に作曲された「精霊の庭」とは別人のようである。

    「系図」で武満は家族ということをテーマに、
    『若いひとたちのために、なにか、おだやかで、肌理こまかな、
    単純(シンプル)な音楽が書いてみたくなった』という。
    谷川俊太郎の『詩のこころを生かすことに専一して、専門的なこだわりなど
    捨てて作曲しました。結果としては、たいへん調性的(トーナル)な響きのものになりました。
    しかし私は、単なる郷愁(ノスタルジー)で調性(トナリティ)を選択したのではなく、
    調性というものを、この世界の音楽大家族の核にあたるものだと信じているからこそ
    それを用いることを躊躇しませんでした・・・』サイトウキネンフェスティバルでの初演に
    寄せたプログラムにはそう書いていた。(CDのブックレットより引用)

    「系図」はニューヨーク・フィルハーモニックの創立150周年を記念して委嘱され、
    1995年4月に初演された。同じニューヨーク・フィルより委嘱され、世界にタケミツを
    知らしめた「ノヴェンバー・ステップス」(1967年)とはなんと異なる響きの世界だろう。
    武満徹はしっかりと西洋音楽の「系図」に根をおろしてこの世を後にした。
    後には精神の<オアシス>のたち*が私たちのために遺されたと思う。


    *武満の作品、「樹の曲」「グリーン」「ユーカリプス」「海へ」「鳥は星形の庭に降りる」
    のタイトルから採った。
    la fontaine * クラシック音楽 * 23:19 * comments(2) * trackbacks(0)

    コメント

    figaroさん
    武満の作品は実演で聴く方がはるかに面白いです。
    しかし、以前に比べ聴く機会は減ったように思います。残念です。
    Comment by La fontaine @ 2006/05/01 12:44 AM
     こんばんは。
     コメント、ありがとうございました。
     こちらこそ、ご無沙汰しております。
     お元気ですか?

     武満徹の作品では、オーケストラ曲よりも合唱用に編曲された作品やソング、ギターのための作品を聴くことのほうが多いですね。
     今度、まとめてオーケストラのための作品を聴いてみようと思います。
     ナクソスから、オールソップとボーンマス交響楽団のコンビによる作品集も発売されるようですし。

     それと、岩城宏之さんの指揮した京都市交響楽団の定期演奏会(オール武満プログラム)も聴いておけばよかったと、少し後悔しています。
    Comment by figaro @ 2006/04/29 9:48 PM
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