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モーツァルトは「なぜ直した」か?

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    モーツァルトは「直さない」?
    は多くのかたに読んでいただいた。
    また個人的にメールで励ましの言葉を下さる方もいて
    ほんとうにうれしい。
    実はこの問題をもう少し掘り下げてみる必要があるのではないか?
    と思いふたたび取り上げることにした。

    ハ短調協奏曲KV491は、1786年4月7日のブルク劇場のアカデミー(予約演奏会)で発表された。
    モーツァルトは1782年のシーズンからこの時期までにピアニストとして
    活発なコンサート活動を行っており、その中心は自作のピアノ協奏曲にあった。
    それは同時に「金になる」仕事でもあった。
    当時ピアノ協奏曲という分野はまだ未開拓で、モーツァルトは多くの実験を
    試みることができたと思われる。
    この曲はそうした一連のピアノ協奏曲の最後にあたり、冒頭から野心的とも
    挑戦的ともとれる始まり方をしている。
    この曲はc,es,asというメロディー進行で始められ、明確な調性の表明は12小節にわたって慎重に避けられている。ハ短調の主和音は13小節目のフォルテまで現れない。 
    これが当時の聴衆にいかに大きなインパクトがあったことか想像に難くない。

    モーツァルトはこの協奏曲の独奏パートを何箇所も書き変えている。
    比較のために21番協奏曲KV.467のファクシミリ版をみると違いは
    かなりハッキリする。
    21番はあまり訂正もなく、さらっと書かれたという印象を我々に与えてくれる。
    Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Concerto No21 in C Majar
    The Autograph Score, The Pierpont Morgan Library/ Dover Publication
    )

    だが24番では、ピアノパートが随所で訂正されている。
    この「訂正」には、二種類ある。
    1)メモのように主要の音符だけを書いておいて後から五線紙の空欄に
    書いたもの(モーツァルトは自身の演奏の時は、ピアノパートを
    即興的に演奏していたと考えられ、音の輪郭だけをメモのように
    スコアに記すことがあった。

    2)音を修正するために五線紙の空欄に書いたもの


    ↑第2楽章33小節〜36小節 下から3・4段目がピアノのパート
    その上段に訂正がある。下から2段目は低弦のパート。


    ↑この部分(第3楽章41小節〜48小節)は、彼が細部の仕上げにこだわり、
    推敲を繰り返していた跡がハッキリと見て取れる

    ではいったいモーツァルトはなぜこうした「直し」を行ったのか?
    それは、こうした予約演奏会へ来る聴衆(モーツァルトの支持者たち)が、かなり大きな期待と高い要求をもってコンサートに来ていたからではないか?
    これは彼にとっては「金になる」仕事であったし、そのためには聴衆にも満足してもらわなければならなかった。しかもその聴衆はウィーンの名士たちであったのだから、こうした細部のより綿密な仕上げが必要だったのではないだろうか?

    こうした彼の作曲のプロセスや推敲の過程を見るとき、なぜ彼がそう
    したのかを考えると、モーツァルトへの私たちの理解も変わってくるのではないだろうか?

    モーツァルト:ピアノ協奏曲24番のファクシミリ版
    Wolfgang Amadeus Mozsrt:Piano Concerto K.491
    The Robert Owen Lehman Foundation Washington 1964







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    la fontaine * モーツァルト * 20:31 * comments(2) * trackbacks(0)

    コメント

    こんにちは。

    「金になる」仕事はモーツァルトの手紙の中に出てきます。
    (1784年2月10日 父宛の手紙)
    >理想と現実をどう摺り合わせていくか
    そうですね、これは私も同じです。ちなみに協奏曲についてのモーツァルト自身の見解は近々ブログで紹介しますね。
    Comment by La fontaine @ 2006/02/09 9:50 AM
     こんばんは。
     コメント、ありがとうございました。

     >「なぜ直した」か?
     非常に興味深く読ませていただきました。
     「金になる」仕事、という点は、確かに忘れてはならない部分だと思います。
     理想と現実をどう摺り合わせていくか、モーツァルトに関してのみならず、現在の僕ら自身のあれこれにもつながる視点のように感じました。
    Comment by figaro @ 2006/02/09 1:02 AM
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