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メイナードソロモン 「モーツァルト」を読む

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    モーツァルト
    モーツァルト
    メイナード ソロモン, Maynard Solomon, 石井 宏

    今年はモーツァルトの音楽を取り上げる機会がいくつかある。
    しかし、モーツァルト・イヤーでもあるし、ここで改めてより深く知りたいと思い、
    少しずつ文献を読んでいる。
    だが、モーツァルトに関する文献は、無数といっていいほどたくさんある。
    その中でまず今年初めに私が選んだのは、
    「モーツァルトの手紙」(上・下)岩波文庫
    であった。
    それは、ある意味作曲者本人に近づく良い手段もあるからだ。

    さてその次は・・・・?
    さすがに困った。数が多すぎる。
    そこで音楽の文献が比較的揃っている公立の図書館を訪ねた。
    一冊一冊手にとって、ページをめくって拾い読みをしていくなかで、
    メイナード・ソロモン「モーツァルト」新書館
    を手にした時、私は「これかな?」という予感を持った。

    昨年、宮城学院の生涯学習センターでベートーヴェンの交響曲に
    ついての講座を持った時、彼の著作「ベートーヴェン」(上・下)岩波書店
    をしばしば参照し、その洞察力の鋭さと深さに大いに触発されたからだ。

    読みはじめてみると、すでに史実として知っていることさえも、
    鮮やな新しい意味づけが与えられ、その一種スリリングな語り口に、
    どんどんと引き込まれていく。小説のように次の展開が気になって、
    読み飽きることがないのだ。
    そうでなければ、800ページ近いこの本を読むのは、その分厚さだけでも
    挫折しそうである。

    例えば、ソロモンは手紙に記録されたモーツァルト父子のやり取りを通して、
    二人の生い立ち、性格、心理的葛藤や並行関係を、心理分析を導入しながら、
    新しい見解を次々に明らかにしていく。
    個人的にはモーツァルトの手紙を読んでいたので、引用された手紙での
    モーツァルトの状況がインプットされているのでなおさら興味が増す。
    他の本にはあまりない大きな特徴だろう。
    「若く才能ある作曲家は、発展の段階のある時点で、それまでに吸収した
    他人の影響の集大成のような存在から、それを越えたものになっていく。
    他の作曲家のスタイルの単なるアマルガム以上のもの、模倣者以上のもの
    弟子以上のもの、伝統の橋渡し以上のものにと成長していく。作曲の腕は
    熟練し、それまでに聞いたこともない言葉で語るようになり、自分の声に
    めぐり合うのである。」(第8章 作曲者自身の声 p193より)

    そして、1772年〜76年に作られたセレナーデヴァイオリン協奏曲
    モーツァルト独自のスタイルがはじめて確立されたことが、私たちに紐解かれる。
    もともとは機会音楽で、差しさわりのない、牧歌的な、一度演奏されれば
    使い捨てられる運命にあったこのジャンルに、新しい要素
    (楽章間の強いコントラスト、緩徐楽章における内面的表現など)が
    導入され、深い感情の世界へ向って展開するという視点が鮮やかだ。
    また、モーツァルトのアダージョやアンダンテなどの緩徐楽章に、
    他の作曲家には見られないほどの、構成、クライマックス、内的葛藤などが
    表現されていることを、作品の分析を通して明らかにしているのも
    大変に興味深い(第12章 楽園の愁い)。

    ソロモンは文章による叙述を基本として本書を構成しているが、上の2章では、具体的な作品を、譜例をあげて納得の行く説明を試みている。
    (他にも譜例が使われている章はある)。

    この本への興味は尽きず、何度も読み直したくなる。しかしそれ以上に、
    モーツァルトの音楽への尽きない魅力を、改めて教えられたように思う。
     Viva Mozart

    la fontaine * ブックレビュー * 11:48 * comments(2) * -

    コメント

    コメント、リンク紹介ありがとうございます。
    Comment by L.F.D.L.Musique @ 2013/10/04 12:31 PM
    こんにちは。はじめまして。
    M. Solomon の本は読みでがありますね。和訳が出る前に旅行先の英国で買ったのを思い出しました。

    こちらのブログの紹介がすばらしいので、私のブログで参照先としてリンクさせていただきました。まずはお知らせまで。
    Comment by Shira @ 2013/10/03 11:54 PM
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