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CDレビュー マーラー:交響曲第1番「巨人」 ノリントン指揮シュトゥットゥガルト放送響

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    レーベル: Hanssler SWR
    輸入・発売元:キングインターナショナル
    番号:93137


    なんと清々しい、さわやかなマーラーだろう!。
    ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団が演奏した
    マーラーの交響曲第1番の新録音を聴いた第一印象だ。
    「巨人」とよばれこの作品には、壮大な交響曲というイメージがつきまとう。
    当初マーラーはこの作品を、2部構成5楽章からなる音詩、
    または交響詩と考えていた。しかし、初演は大失敗に終わり、
    後にマーラーは「花の章」と呼ばれる第2楽章を割愛。4楽章の伝統的な
    交響曲の形に手直しし、以後それがずっと受け継がれてきた。

    ここでは、作品の内容には深く立ち入らない。むしろ演奏に目を向けたい。
    ノリントンは、来日演奏会でもこの第1番を取り上げているそうであるが、
    私は実演を聴いていないので、はじめてこのCDで演奏を聴いた。
    CDのライナーノートでノリントンは、この作品についての考えを述べている
    (ブックレットに日本語版が付けられている)。
    まず、この演奏に至るまで研究に6年が費やされたという。
    また「花の章」を第2楽章として本来あった位置に配し、
    5楽章の交響曲とした。さらに第1・第2ヴァイオリンを左右に配する
    古典配置をとっている(もっともこれはクーベリックなども実践していた)。
    しかし最大の特徴は、弦楽器のヴィブラートを抑え、初演当時のドイツに
    おける伝統的なオーケストラ奏法を取り入れたことにあるだろう。
    1920年代までのドイツでは、振幅の大きなヴィブラートは避けられていた。
    そのことによって、各声部は明瞭で、いわば音の透明性が確保されていたはずだ。

    とうとう流れはここまできたか、という感が強い。
    私がドイツに滞在していた1980年代に、ヨーロッパでは古典派音楽の
    演奏様式が大きく変わりはじめていた。
    古楽器の演奏が、放送やレコード録音のみならず、実際の演奏会でも
    頻繁に聴かれるようになったからだ。
    私は1981年のフランス・ブリュッヘン指揮による新設「18世紀オーケストラ」の
    旗揚げ公演を、ミュンヘンまで出かけて聴いた。
    その時モーツァルトの「ジュピター」交響曲はなんと鮮烈に響き、
    新鮮な驚きを与えてくれたであろうか。
    それはあたかも、「モーツァルトの初演」を聴くような錯覚すら覚えた。
    古典作品の読み直し、再解釈という流れはその時満を期していたのである。
    (残念ながら日本はその流れからまだ遠くにあるように思う)。


    ↑18世紀オーケストラのミュンヘン公演のプログラム表紙。


    ノリントンの演奏が本当にマーラーの演奏した当時の響きの再現かどうかは、
    誰にもわからない。しかし、それがそうであったかどうかよりも、
    この演奏が私たちに与えるインパクトと問題提起の方が大きい。
    これからの演奏は、何をどう表現するかがますます問われることとなるだろう。


    la fontaine * CD/DVDレビュー * 00:03 * comments(0) * -

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