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ブックレビュー 《ヘンデル オペラ・セリアの世界》

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    ウィントン・ディーン著「ヘンデル オペラ・セリアの世界」
    藤江効子・小林裕子訳               春秋社

    ヘンデルのオペラ、というと日本ではほとんど馴染みがない。
    ラルゴ(Omra mai fu)や Lascia, ch'io pinaga の一部の
    アリアが有名に過ぎない。
    ところが近年ヨーロッパでは、ヘンデルのオペラの上演が盛んになり、
    その結果としてヘンデルの再評価が進んでいる。
    その背景には、1980年代から盛んになった古楽による演奏が
    音楽のバックグラウンドとして定着してきたことが考えられる。

    実は昨年3月にドイツに行った際、ヘンデルのオペラをいくつか
    みる機会があった。かねてから関心はあったが、なかなか見る機会が
    なかった。実際に劇場で体験すると、その音楽が美しさと、登場人物の
    豊かな性格描写に感心した。

    そんなヘンデルのオペラについての詳しく書かれた本が出版された。
    原著は、1969年出版。しかし、その後のヘンデルのオペラの研究・
    上演には格段の変化があり、日本語版の出版に際して著者が大幅に
    改訂した。つまりこの本は最新版である。
    巻末には索引のほか、訳者により、年譜、ヘンデル・オペラ作品一覧、ディスコグラフィーが加えられているのが大きな特徴だ。
    とくにディスコグラフィーは、録音を探すのに苦労せずにすむ。

    本の内容を簡単に紹介しておこう。

    日本語版への序文
    初版への序文
    第1章 オペラ・セリアの慣習
    第2章 ヘンデルの解決
    第3章 ヘンデルのオペラ作曲家としての経歴
    第4章 台本
    第5章 英雄オペラ
    第6章 魔法オペラ
    第7章 反英雄オペラ
    第8章 劇場における職人芸
    第9章 アリアとレチタティーヴォ
    第10章 オーケストレーション
    第11章 現代におけるヘンデルのオペラ

    まず「オペラ・セリアの習慣」について述べられている(第1章)。
    オペラ・セリアには決まりがある。その習慣にたいして、ヘンデルが
    どのような解決法を見出したか、が第2章にある。さらに「ヘンデルの
    オペラ作曲家としての経歴」では、彼のオペラについて年代順の記述
    が(第3章)、続いて台本の問題が取り扱われる(第4章)。
    ここではじめてヘンデルのオペラは大きく分けて三つのタイプがあることが
    わかる。英雄オペラ(第5章)、魔法オペラ(第6章)、反英雄オペラ(第7章)。この分類は題材に基づくものだが、言われてみてはじめて、見たオペラがどれだったのか分かった。昨年この本が出ていればと悔やまれる。
    第8章ではそうしたオペラの上演が行われた劇場についての記述がある。
    劇場の構造や、装置にとどまらず、どこで幕の上げ下ろしをするかといったことが、
    作品構成と密接に結びついて作曲されていることが分かる。続く2つの章ではアリアとレチタティーヴォ、オーケストレーション、について注目すべき見解がある。

    以上かんたんな目次の紹介であるが、私もこれを読んで、ヘンデルに対する見方が変わったように思う。


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